こうなることは、最初から分かっていたのかもしれない。
今目の前にいる男が、再び自分の前に現れることを。
彼からの連絡が届かないように、ポケベルの番号も変えた。男の影がないかどうか、いつも背後を気にしながら学校へ通っていた。恋人――光樹は、心配して頻繁に電話をくれた。
それから男は現れることはなくなった。何日経っても・・・。もう、啓二に会うことはない、と半ば安心していた。その矢先――。
下校途中、家の最寄駅から少し歩いていると、1台の黒い車が歩道脇に止まった。窓が、ゆっくりと下がっていき、その中から、見覚えのある男の顔が覗いた。彼は黒い笑いを浮かべた。
清太が戦慄しているのをよそに、「乗れ」と低い声で、彼は言った。周りには民家などがある。恐怖といつもの臆病さで、大声を出すことができない。少年は何も言わず、言われるがままにした。
「啓二・・・さん・・・」
それでも、車が走り出すと清太は掠れる声で、やっと言った。横の彼を見た。彼は自分のほうを見ない。
「逢いたかった・・・」
とだけ、無表情に言う彼。ハンドルを握る手元を見ると、微かに震えていた。
「俺と別れたいだって?」
ベッドの上に清太を押し倒すと、啓二は言った。
少年の制服の長袖シャツはボタンが全て外されてはだけ、鍛えられて盛り上がった胸が見えている。その顔には不似合いな・・・。啓二もスーツの上着を脱ぎ、白いYシャツ姿になっている。清太は片腕を年上の男の背中に預け、怯えた表情を見せる。
「どの口が言ってる、この口か?」
少年のあごをぐっと掴み、ヒステリックな母親が悪いことをした子供に言うように、啓二は言葉を吐いた。部屋に入ってから、彼の感情は一気に流れ出したようだった。
「全く・・・悪い口だな・・・」
「んぐっ」
あごを掴んだまま、彼は強引に少年の唇を奪った。
「そういう悪い口にはな・・・教えてやらなくちゃいけないな・・・この味を・・・」
清太の目を見つめたままそう言うと、自分の腰のほうへ手をやり、ズボンのチャックに手をかけた。下ろしながら、少年の上にのしかかる。
「な・・・? 手・・・腕が・・・痛いよ・・・」
啓二の膝は、清太の両腕を上から押さえつけていた。
と、彼の腰が顔の近くに迫る。彼のものは、すでに露わにされている。
「けっ啓二さん・・・何す・・・」
そのまま、それは清太の口に押し当てられ、突き入れられた。
「ぐっ・・・」
突然のことに、清太は思わず呻いた。
「もっと深くくわえ込め・・・」
男は腰をさらに押し付ける。清太の髪を、両手で荒々しく掴んだ。
「飲み込むんだ・・・!! 俺の・・・出すものを!!」
「ん・・・っ」
啓二のものは、奥深く入ってくる。彼の体が揺れる振動で、益々口中に満たされてゆく。
『息が・・・詰まる・・・』
喉を動かし、仕方なく清太は男の言う通りにした。
「もっと飲め・・・!! 全部だ!!」
まるで何かに取り付かれたかのように、啓二は叫んだ。
「くっ・・・、ひ・・・ひどいっ・・・!!」
体を横向きにして力なくベッドに横たわり、ごほっ、とむせて涙を流しながら清太は言った。
彼の怒りを初めて受け、これが彼なのか・・・と、清太は改めて啓二に恐怖を感じていた。心では、整理のつかないものを持て余していた。嵐の中、小船が翻弄される様(さま)を思い浮かべた。
「何がひどいだ。お前が別れるなんて言うからだ・・・。できるわけないだろそんなこと。俺から逃げられると思ってるのか」
怒気を含んで、啓二は顔だけ半分振り向かせて言う。立って、シャツを肩からふわりと外したところだった。それを、清太は泣きながら聞く。
再び近寄り、啓二は清太のズボンをずり下ろそうと手をかけた。
「あっ・・・なっ・・・! やっやだこのままなんて・・・!!」
このまま暴力的に犯されるのではという予感に、清太は逃げるように体を捩(よ)じらせた。
と、左頬を男の掌が打つ。
「!」
着ているものを全て捨て去り、啓二は清太の上に再びのしかかる。清太も、啓二に脱がされて何もまとってはいない。初めて打たれたその痛みを頬に感じながら、清太は啓二を見つめた。頬は、まだ赤みを残している。
「シャワーを浴びたかったらな・・・、俺にひと言『愛してる 絶対別れない』って言ってみろ」
上から少年を見据える啓二。
「でないとこのまま入れるぞ」
腰を押し付ける。
「や・・・やだ・・・」
それだけはされたくない。清太は枕に頭を預けたまま、横を向いて小さな声を出した。
「あ・・・愛してる・・・」
「俺の目を見て言え」
「絶対に・・・あんたとは別れない・・・」
頬に伝わる涙をそのままに、清太は涙声で男に意志のない言葉を贈った。
熱いシャワーに打たれながらうなだれ、その中に涙を隠し、清太は泣き濡れた。
受け入れるしかない、これは運命なのか・・・?
「な・・・なんで・・・?」
啓二の首に腕を回し、彼の動きを受け入れる中、半ばだけ開かれた目で清太は聞いた。男は自らの脚を左右複雑に曲げ、体の中心に少年を感じながら、むさぼっている。
「僕じゃないと・・・だめなの・・・?」
啓二の動きに合わせて息をつきながら、やっとという感じで声を出す。
「そりゃあ・・・」
彼も息が荒い。清太の腰を抱えながら、一度体を引いた。
「お前セックス上手いからな・・・」
再び、強く突き入れる。
「あっ・・・」
思わず、清太は啓二の首に回した腕に力を込めた。
「何しろ・・・よく締まる・・・。俺のものが実によくフィットするんだ・・・」
その中にも、清太の入口は啓二の言った通りになる。
心とは裏腹に、少年は快感のただ中にいた。
「ん・・・だって・・・あんたの・・・太いし・・・長・・・あっ・・・やだ! こんな・・・奥、すぎ・・・」
啓二のものは、容赦なく体の中をかき乱した。
「あっ・・・ああああっ!!」
片脚を高く上げ、清太は最後までいってしまった。
「まだだ・・・今日はお前が気を失うまで・・・いくらでも攻めてやる・・・」
少年の体をうつ伏せにして返し、啓二はその上に体を重ねた。清太の左手に、自分のそれを乗せる。
「四六時中俺を忘れなくなるような・・・そういうセックスをしてやる・・・」
「啓二さん・・・」
清太は戸惑いがちに言った。二人の体には、まだ乾かない汗が覆っている。こうして体を重ねているだけで、啓二の汗と自分のそれとが混じり合うような気がした。
そうして、幾度目かの繋がり。
「ね・・・ねえ・・・」
「なんだ?」
「もう・・・やりすぎて漏れてるんじゃない?」
後ろから啓二に突かれ、その緩むことのない動きに清太は不安と戸惑いを感じて言った。
「ほっとけこのくらい。まだ3発目だぜ・・・」
さらに、啓二は揺れる。
「それにオイル代わりになるだろ?」
倒錯的とも言える台詞を吐きながら、さらに突く。その口の端には、満足感のにじみ出た笑みがこぼれている。
「あ・・・ん・・・っ、いい・・・っ」
今や清太の心と体は完全に離れ、男のされるがままになっていた。感じるままに、甘い声を迸(ほとばし)らせてしまう。
部屋に入って、何時間が経っただろうか。
部屋の中には二人の吐息だけが聞こえていた。その行為により、室温も上がっているだろうと思われる。
啓二は脚を開き、清太の体をその間に入れている。後ろから、彼の腰に腕を回す。
「あ・・・ん・・・、嫌・・・。もう・・・だめ・・・。許して・・・啓二さん・・・」
息苦しそうに、清太は掠れた声で懇願した。体もがっくりとさせ、彼にもたれかかっている。
だが、啓二は容赦しない。少年のものに、熱い手で触れた。それも自分の手同様、熱を持っているのを感じた。
「だめだ」
手をそれから一時離し、腕を腰に回したまま清太の中に入った。
「あっ」
清太は一際大きな声を出す。
bound bird
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