男の舌は、少年の内側を更に濡らしていく。清太は膝を自分で支えながら、耐えた。目を閉じていると、男の舌の動きがよく分かる。彼が内部を探っている音まで、聞こえた。
 入口が潤ってきたのを確かめると、啓二はまたそこに指を侵入させた。今度はいきなり、人差し指に加え、中指も添えてきた。
「んっ、やっ・・・」
 足指が震えるのを、少年は感じた。青年は2本の指で入口を押し開き、薬指も加えた。だが、わざと内側の急所を外して、楽しんでいるようだった。
『意地悪・・・』
 少年はそう思ったが、後で彼の道具で直接攻めてくれるのなら、それでも良かった。

 啓二がいつまでも指で探り続けているので、清太にはもどかしさが募ってきた。今日はどうして、こんなにも焦らすのだろう。だが、自分から言うのは悔しく、恥ずかしいので、しばらくは黙って受け入れていた。
「ね・・・、電気、消して・・・。横、の・・・」
 吐息混じりに、合図代わりのつもりで、こんなことも言ってみた。
「いや、点いてたほうがいい。お前のここが、よく見えるからな・・・」
 啓二はそうして、指を更に中ほどへと進めた。それが良くて、締め付けてしまう清太。
『僕に、言わせるつもり・・・?』

 啓二のほうは、大丈夫なのだろうか。自分は指で攻められているだけでも、かなり前が起ち上がっているのに、彼はまだ繋がりたいと思わないのか。
 少年は、首を曲げて、彼の分身の様子を窺おうとしたが、陰になっていてよく見えなかった。
「そんなに欲しいか?」
 が、いきなり彼はそう聞いてきた。清太は焦って首を戻し、目を逸らした。
 啓二は少年の中からようやく指を抜いた。ベッドの右側のライトだけ消し、清太が頭部を預けている枕の下から、自分の身に着けるものを、取り出した。
『いつの間に・・・』
 清太は呆れた。自分がシャワーを浴びている間にでも、隠しておいたのか。
 そう思っている間に、啓二は袋から出して自らの分身に、それをまとった。見ると、彼のものは既に立派な大きさになっていた。

『やっぱり、そうなんじゃないか』
 少年は彼に気付かれないよう、内心膨れっ面をした。
「俺が欲しいか?」
 啓二は少年の脚を開かせ、深く曲げさせながら、聞く。
「ほ、欲しい・・・」
 真っ直ぐに目を見つめられ、少年はこう答えるしかなかった。
「いい子だ」
 啓二は微笑んで、少年の入口に、最大限に膨らみ、固くなっているものに手を添え、ゆっくりと滑り込ませていった。
「あ、あふんっ・・・!」
 自分の体が押し広げられる快感に、少年は思わず顔を仰け反らせ、声を漏らした。思っていた以上に、彼のものは大きすぎた。もう何度も繋がっているのに、この瞬間はいつも緊張感が襲う。

「や・・・、まだ、駄目、待って・・・」
 彼のものは根元まで入ってきたが、すぐに動き出されてはたまらない、と少年は思った。自分の体になじむまで、待ってほしい。
「どのぐらいだ?」
 啓二は不敵に笑みを浮かべる。
「意地悪・・・」
 まだ始まっていないのに、少年は泣きそうな気分になった。腰を動かし、具合を確かめた。
「ん、来て・・・」
 少年がようやく請うと、青年は初めは優しく、動き出した。
「あっ、ああっ・・・」
 それでも、やっと繋がれた喜びで、少年は満たされた。この時を、どれほど待っただろうか。

『着けなくても、よかったのに・・・』
 待ちわびていたのだから、彼のものを直接肌で感じたかったのだが、もう遅かった。
「啓二さん・・・」
 彼を見つめ、自分でも彼に合わせ、腰を揺らし出した。すると、彼は動きを速めてくれた。快感は増した。
「んっ・・・!」
 ベッドも高級なのか、軋み音はあまり鳴らなかった。少年はいつも、軋み音を聞いて更に欲情を掻きたてられるので、少し残念に思った。もっと揺らしてほしい、と相手に願った。
「来て、もっと・・・!」
 請うと、啓二は少年に覆い被さり、顔を近付けた。腰の動きも、強くした。先程は外されていた内部の急所も、攻めたてられた。
「あ、ん・・・っ」
 薄目で彼を見ると、前髪も横の髪も完全に乱れ、色気に包まれていた。清太はその男らしさに、うっとりとした。
「清太、好きだぜ・・・」
「あ、僕・・・」

『僕も、好き・・・』
 思わずそう言おうとして、少年は留まった。それを言ったら、負けだ、と思った。
 愛し合っているこの瞬間は幸せだが、まだ、どうしても、それは言いたくなかった。
「僕を、壊して・・・」
 代わりに、こう言った。
「壊してやる」
 啓二は答え、少年の体を腰の動きで押した。押され、少年の頭部は枕を外れた。
「啓二、さん・・・」
 その勢いに、少年は戸惑った。再び目を開け、彼を見つめる。
『なんて、男らしいの・・・』
 自分を攻める彼の表情も動きも、酔わせるのに十分だった。彼の熱い分身を、益々締め付けてしまう。腕も、彼の体を抱きしめる。

「啓二さん、啓二さん・・・」
 彼に突かれ、ベッドの枕元の板に追い詰められそうになったので、少年は身を起こそうとした。青年はそれを助け、抱き起こした。繋がったまま、清太は啓二の膝の上に乗る形になった。
 向かい合うと、少年はすぐに彼の唇を求めた。彼は応える。
『駄目、好きに、なっちゃう・・・』
 彼と舌を絡ませながら、清太はまだ自分に歯止めをかけていた。
 繋がりながらの口付けは、更に少年を酔わせた。啓二は相手の腰を抱え、容赦ない動きをする。
「んっ、あっ、駄目っ、駄目っ・・・!」
 彼に揺さぶられ、少年は叫んだ。
 こうして、今まで色んな少年を彼が抱いてきたのかと思うと、悔しくなった。もっと早く、彼と知り合いたかった。

「清太、可愛いぜ・・・。可愛い奴だ、お前は・・・」
 唇を離し、首筋に口付け、啓二は囁く。少年を強く突き続けながら・・・。
 なんて激しいのだろう。少年は快感のあまり、どうにかなってしまいそうだった。こんなにも自分を愛してくれる彼を、愛しいと思った。
 彼の肩越しにカーテンを見ると、灯りが一つだけ点いているので、二人の揺れる妖しい姿が、映し出されていた。その影の蠢きの速さに、淫靡さに、少年は驚いた。


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