清太の唇を味わいながら、光樹は腰に巻いたタオルを取り、床に捨てた。それを待って、清太が光樹の背中に腕を回す。青年は少年に体重をかけ、ベッドの上に押し倒した。清太の背中の下がシーツではなく、まだめくられていない掛け布団だと気付いたが、構わずに口付け合う。清太は夢中になりながらも、このまま繋がるのではないかと不安になった。これでは開放的すぎる。布団1枚を隔て、秘密の空間で愛し合いたい。
 二人はどちらからも唇を離そうとせず、磁石が引き合うように引き寄せあい、舌を絡ませた。舌だけではなく体も複雑に絡ませ、布団の上で上下が交錯した。光樹も自分を求めていたのだと、清太は嬉しくなり、彼の背中で指を滑らせてしまう。抱き合ううち、布団は自然に二人の足元へ押し下げられた。清太の腰に巻かれたタオルも外れ、ベッドの下に落ちる。

 今日はただ彼に身を任せるだけでは嫌だった。愛されるだけでは・・・。自分からも、彼を知りたかった。――彼のものに触れたい。本当は、彼の中心にもっと触れたいとベッドでいつも思うのだが、彼に断りもなく勝手に触っていいものかどうか悩んでしまい、結局愛されるだけになってしまう。はしたないと思われたくないので、遠慮してしまうのだ。
 その時、二人は横向きに抱き合っていた。長い口付けに唇が疲れ、光樹から先に離した。彼は少年の瞳を見つめようとしたが、清太は目を逸らし、彼の首に頭を寄せた。光樹は指を髪に埋め、なでてくれる。その間に、清太は彼に気付かれないよう、そっと右手を下に伸ばしていった。脚を絡ませ、密着している体を少し離し、彼のものに触れようとした。しかし手前で、指が戸惑ってしまう。二人の間で、少年の右手が泳いだ。
 勇気を出して、恥ずかしげに清太は聞いた。
「触っても、いい?」
 光樹は優しく笑う。
「いいよ。俺は君のものなんだから」

 その言葉を聞いた途端、清太は自分の顔が真っ赤になっているだろうことを感じた。ベッドに入る前から、彼は自分の気持ちが分かっていたのだろうか。欲しがっていることを、悟っていたのだろうか。いつからかは分からない。が、どこからか意地悪をされていたのは確かだ。ならば、今日は思い切り彼に甘えたい。彼を知りたい。羞恥を覚えながらも、清太の指は彼のものに、やっと触れた。すでに固くなっているそれに、清太は驚き、躊躇した。視線を下ろし、目でも確かめてみた。これからもっと大きくなり、固さも増すのだろうか。それが自分の中に入ってくるのかと思うと体が熱くなり、自分の分身もさらに反応してしまった。目から隠す意味もあって、清太は恋人のものをそっと包んだ。温度もリアルに伝わり、胸の鼓動は速まった。

「それだけ?」
 光樹は笑顔を残しながら言った。
「え・・・」
「君がしたいなら、口でしてもいいよ」
「そんな。いいよ。僕そこまでは・・・」
 彼にはいつもしてもらっているが、自分から彼に、というのはあまり考えなかった。
「じゃ、交代するよ。その後は、もうないからね」
 彼は身を動かし、清太の上になろうとした。最後のチャンスだ、とでも言いたいのだろうか。
「やだ、意地悪・・・」
 慌てるように清太は体を滑らせ、彼の中心の前に顔を寄せた。彼は脚を開く。

 先程より間近になり、清太は瞬きした。それに伝っている血管まで、目に映る。これがいつも、自分を愛してくれているのか。そう思うと愛しくなり、唇を触れさせた。脈打っている彼のもの・・・。しかし今ここで彼に頂点に達してもらうのは、もったいないような気がした。放つなら、自分の中で放ってほしい。早く、中に入ってきてほしい。
 清太は何回か彼のものに口付けしただけで、起き上がった。
「もういいの?」
 清太の肩に手を置いた光樹は、言った。
「うん・・・。だって、やっぱりまだいってほしくないんだもの」
「後がいい?」
「うん」
 意味を悟ってくれた彼に、清太は感謝した。

 位置を変え、清太は光樹の下で仰向けになった。彼はすぐに少年のものに顔を寄せ、口に含んだ。
「嫌、もう・・・?」
 彼は最初からこうしたかったのに、我慢していたのだと思い、清太は力を抜いて、彼のするように任せた。彼の舌は、『こうするんだよ』と少年に教えているように、複雑に動いた。自信がなくてやめたわけではないことを、彼も分かってくれているはずだ。だがその丁寧な動きは、清太には嬉しかった。感じながら、清太は学習した。やはりいつかは、彼をこうして喜ばせてみたい。
「や、いっちゃう・・・」
 清太が言葉を漏らすと、光樹は何故か途中で唇を離した。閉じていた目を、清太は開けた。どうしたのだろうか。
「後ろ、向いて・・・」
 荒い息遣いで、彼はそう求めた。中途半端な状態の分身をもてあましたまま、清太は言われた通りに体勢を変え、うつ伏せになった。
 光樹は後ろ脇から手を伸ばし、清太のものにすぐ触れた。

「あ、やっ・・・」
 分身を強く握られ、興奮が再浮上した。彼の目的が分かり、清太はシーツの上に四つんばいになる。光樹は清太の分身を握ったまま、手を前後に滑らせ始めた。ただでさえいきそうだったのに、更に手で擦られて、清太のそれは彼の手の中で活魚のように躍った。
「あん、いっちゃう、いっちゃうよ・・・!」
 分身が、彼の生贄であるかのように清太は感じた。捉えられて、離されない。清太は腰を揺すった。分身の動きは自らの意志ではないが、腰のほうはそうだった。快感が増すからだ。
「光樹・・・っ」
 やがて、たまらずに清太は彼の手の中に放ってしまった。四つんばいのまま、肩で息をする。光樹は手の中にある、今放たれた少年の白いものを、彼の後ろへと滑らせた。かなりひくついてはいるが、まだ相手を受け入れるほどの余裕はない。

「清太、大丈夫・・・?」
 前戯でいじめすぎたかと思い、青年は聞いた。
「ん、大丈夫・・・。光樹、早く・・・」
 入ってもらう準備を施してほしいと、清太は上半身を少し落とした。自然に、下半身の位置は高くなり、彼の入口は恋人の前に露わになった。
 光樹は少年のそれに、より多く白いものを塗り、濡らした。濡れてくると、まず人差し指を入口にゆっくりと埋めていった。
「あ、ふん・・・」
 求めていた行為の序章が訪れ、清太は嬉しさに甘い声を漏らした。
 光樹はしばらく指を相手の中で動かし、解(ほぐ)し始めた。入口が柔らかくなってくると、更に中指も加える。『まだ・・・?』清太は口に出さず、心の中で聞いた。気持ちとしては、彼がいつ入ってきてもいい。早く、繋がりたい。だが光樹は、薬指も加え、動かし続ける。そんなに奥まで入ってくるつもりなのだろうか、と清太は待ちわびながらも期待してしまった。

「光樹、僕もう・・・来て・・・」
「分かってる」
 やっと、彼の指が入口から去り、変わりに、太く固いものが清太の中に入ってきた。ゆっくりと、それは空洞を満たしていった。
「は・・・あ・・・」
 清太は体を震わせ、彼の訪れを受け入れた。それは奥まで入ってきて、入口の外に彼の袋が当たった。
「清太・・・」
 名前を呼び、光樹は少年の中で動き出した。
「あっ、ああっ・・・!」
 清太もすぐに腰を揺らし、彼と同じリズムを刻み出す。やっと、繋がれた・・・。その喜びに、清太の心は打ち震え、大胆に動いてしまう。

「清太、いいよ・・・」
 少年の腰の動きの反動を受け、光樹も遠慮なく恋人を攻めた。清太の腰に手を添え、更に密着し、共に揺れる。
 清太はそばにあった枕は握らず、脇へどけて、そこに上体を完全に寝かせ、膝を曲げて下半身を高くして、彼に捧げた。彼も応え、より強く速く、動いてくれる。清太は快感にシーツを握り締めた。
 布団を被り、秘密の空間で愛し合うことなど、どうでもよくなった。今、二人の体は部屋の中で、完全に生まれたままの姿で隠されていないが、そのことがかえって清太を刺激した。

「あっ、あっ、あっ・・・」
 リズムに合わせ、清太は声を漏らす。今にもいってしまいそうだが、もっと長く繋がっていたい。我慢しなければならない。長く繋がった末に頂点を迎えるのが、清太は好きだった。光樹のほうは、大丈夫だろうか。自分が繋がっていたくとも、彼だけ先にいってしまうのでは、嫌だった。
 清太はそっと振り返ろうとしたが、彼の顔が見えるほど首を曲げられない。後ろで彼と接合しているからだ。諦め、清太は首を戻した。

「まだだめだよ・・・」
 しかし彼の零したその言葉で、まだ大丈夫なのだと分かった。まだ、離さないと言っているのだ。
「ん・・・」
 短く答え、清太は彼との交合にさらに酔う。
 今日は何回できるか分からないが、後で見つめ合う体位でも繋がりたい。今の体勢では、彼の表情が伺えないことだけが少し残念だった。彼に誘われるまで、抱き合うのは夜だとばかり思っていたが、思いのほか早まったので、今日はゆっくり愛し合える。

 繋がり始めてからどのくらい経ったのか分からないが、彼が自分の腰に回した手が、互いの汗で滑るようになってきた。いく時を延ばすためか、彼は突く速さを緩めたり、速めたりした。速い時は強さが増すので、清太の快感も増した。いつもは優しい彼が、愛し合う時は男らしくなってくれる。今日のように意地悪をした後は、必ず強く抱きしめてくれる。だからますます好きになってしまう。彼の虜だ。
「あん、光樹、もうだめ、もういっちゃう・・・!」
 とうとう限界が訪れ、清太は悶えた。
「じゃあ、一緒だよ・・・」
 彼は優しく言い、少年の中に勢いよく熱いものを放った。
「は、あ・・・っ」
 彼の愛を感じ、清太も直後に果てた。  


I am yours